リンダウ郵便
リンダウ郵便は14世紀初めから1826年までアルプスを越え南ドイツと北イタリアを結ぶ民間郵便業であった。ボーデン湖からロンバルディア州までは片道325キロだが、アルプス越えのため5日半かかる大変なルートであった。時代と場所により徒歩で、馬に乗って、フェリー小舟、馬車などに 乗り換えながら成し遂げられた。この郵便で手紙はもちろん、現金、書類、小包が、さら に17世紀後半からは乗客も馬車でドイツからイタリアまで運ばれてきた。 この民間郵便がいつから実施されていたかは定かではないが、最古の記録は1322年にみられる。北イタリアの都市が貿易で繁栄していた当時、南ドイツの交通の中心地はリンダウでバイエルン、フランケン、シュワーベン地方を結ぶとともに、ライン川やドナウ川の貿易中継点重要な役割を果たしていた。ところがリンダウ郵便には強力なライバルが現れる。ハプスブルク帝国郵便やドイツのトゥルン・タクシス郵便が普及していくにつれリンダウ郵便の独占は崩れ、ついに1826年にリンダウ郵便は倒産した。しかしこの私立郵便業はなんと500年以上という長い期間、ドイツとイタリアを結ぶ経路を開発し保持していたことは驚異である。