切手で辿る都市物語

ブレーメン


 ハンブルクに次ぐドイツ第ニの港町。大司教座の町として興り、交易により独立都市国家ハンザ同盟都市として繁栄した。今も当時の面影を残す煉瓦造りの建物が独特の景観を作っている。

ブレーメン州の紋章 1992年発行 鍵をあしらった紋章に因みブレーメンを「ドイツの鍵」と呼ぶ人もいるとか。

 ブレーメンは787年カール大帝が北方伝道の拠点とした司教座を置いたことでキリスト教伝道の中心地として発展する。ヴェーザー川を通じて北海と内陸へ向かう水路を確保できたので、交通の要、貿易の拠点ともなり、やがて宗教都市から商業中心の都市へと変化していく。

 965年神聖ローマ皇帝から商業特権を獲得し12世紀には司教より商人の力が影響力をもつようになった。市における大司教の支配は名目的なものになり、実権は有力商人が握ったのである。1358年、ハンザ同盟に加わり、1646年帝国自由都市になった。実質的に自治都市となったブレーメンには、そのシンボルとして「ローラントの石像」が建立されている。
19世紀にはヴェーザー川の河口に外港ブレーマーハーフェンが建設され、貿易はさらに盛んになる。現在ブレーメンとブレーマーハーフェン併せてドイツで一番小さい州を形成している。

 

左が壮麗な市庁舎を描く1965年発行の記念切手、右は港を描く1973年の観光切手

 30年戦争の危機に際して、多くのハンザ都市が没落していったが、ブレーメンはハハンブルク、リューベックと安全保証まで含めた三市同盟を結び、生き残った。ヴェーザー川流域の町々はヴェーザー・ルネッサンスと呼ばれる装飾彫刻が隆盛を見、市庁舎、裁判所。、商館、公会堂、教会など重厚感に溢れた建造物がならぶ。歴史の重みが深く刻まれた旧市街はやはり何か重々しい、その中でベトヒャー通りは軽やかな息抜きの空間である。知らなければ見落とすほどの、狭い長さ100mの通りで、アールヌーヴォーの香りが漂う、粋な場所とのことである。

ローラントの石像  ベトヒャー通り 

ローラントの石像
騎士ローラント像は、カール大帝の伝説に登場する英雄。司法権あるいは自由都市の象徴として、主に北ドイツに建ち、ヨーロッパ各地でも見られる。西欧を統一しカール大帝は法の制定者、保護者であり、その権威を実現する象徴として市庁舎、市場の前にこの像は置かれている。
この像がある限りブレーメンは繁栄するのだそうだ。ローラント像が初めて作られた時木造であったのだが、1366年ブレーメン市の勢力争いでブレーメン商人グループに反対する大司教によって焼き払われてしまう。それならばと市参事会は石で作った。古い会計簿にこんな書き込みがある「キリスト生誕後1404年2月10日、ブレーメン市参事会は石のローラント像をつくる。費用170ブレーメンマルク」、それから今に伝わるあの市庁舎が建設される。第二次大戦の爆撃でも破壊から免れられ、ローラントある限り町は栄えるとの言い伝えからスペアのローラント像までブレーメン市によって用意されているそうである


ベトヒャー通り
19世紀まではごく普通の港町の裏通りであった。この通りに樽職人(Büttcher)集まり、やがて樽職人通りと呼ばれる。コーヒーでひと財産作ったルトヴィッヒ・ロゼリウスがその私財を投入し、1923年から1933年へかけて、通りを自分の好みに合わせ、ベルンハルト・ヘトガーら芸術家、建築家を動員して作り上げた。しかし、ナチスの台頭でこの通りは退廃芸術と名指しされ、取り壊される危険が生じた。「退廃文化の忌むべき見本として後代のために一応保存する」という名目で危うく破壊から免れる。ロゼリウスが熱心なナチス党員であったので、それが救ったのかも知れない。ヘトガーは建物の設計の他、多くの彫刻を残している。「光の天使のレリーフ」「ブレーメンの音楽隊の動物達」「七人の怠け者」などナチスの推奨する復古調時代にはモダンであり過ぎた。ブレーメンの近郊にある芸術家村ヴォルプスヴェーデの画家達の中のパウラ・ベッカー・モーダーゾーンの作品を展示したギャラリーもここにある。(彼女はブレーメンの出身)



1982年発行ブルーメンの音楽隊  市庁舎の脇に立つブレーメンの音楽隊の像はロバの上にイヌ、その上にネコ、一番上にニワトリがのっている。”飼い主にお払い箱になった四匹が町の楽師に雇って貰おうとブレーメンへと向かいました。途中の森の中で一軒の空家を見つけそこに住みついてしまい、愉快に暮らしましたとさ” とかいうのがグリム童話にある。ハンザ同盟に加盟し貿易都市として栄えたブレーメンは、帝国自由都市で町は独立していた。活気溢れる町の噂は田舎で食いはぐれた人々にとって、ブレーメンに行けば職がある、何とかなる思いがこの物語になったのかも知れない。でも、この像の四匹の動物はブレーメンには行き着かず、音楽隊にはなっていないのだけど。

参考

ハンザ同盟

ドイツ騎士団

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