初代世話人の故牧泰久氏が部会報第16号〜28号にかけて連載したものです。 氏の収集哲学が記述によく表れ、ヒンデンブルク切手の入門書と言えると思います。 この寄稿文をWEB向きに体裁を整え、切手画像などを配し紹介します。 |
第1回 | ヒンデンブルク切手とは |
第2回 | ヒンデンブルク切手の年表 |
第3回 | ヒンデンブルクとはどういう男 |
第4回 | ヒンデンブルク切手登場 |
第5回 | メダル型シリーズ(1) |
第6回 | メダル型シリーズ(2) |
第7回 | メダル型シリーズ 鉤十字透 |
第8回 | メダル型シリーズ 鉤十字透 続き |
第9回 | メダル型シリーズ 鉤十字透 続きの続き |
第10回 | 占領地消印について |
第11回 | オステン加刷 |
第12回 | エルザス・ロートリンゲン加刷 |
第13回 | ルクセンブルク加刷・他 |
大体においてドイツの通常切手はいろいろ変化があって面白い。 ところがヒンデンブルク切手はどういうものかあまり人気はない。一つには共和国第二代大統領とはいうもののあまり有能でなく、むしろ共和国をナチス独裁に駆り立てた張本人ということで嫌われているのかも知れない。いずれにしてもあまり人気のない切手というものは集め易いだろう、あまり人がやっていないことをしてみるのも一興一興と考えてヒンデンブルク切手を集め始めたのは2年程前である。 ところが、いざ始めてみると案外大変なことがわかった。何が大変かがこのメモランダムのテーマである。切手の解説という程の知識もなし、集め方と見栄を切る程の内容もないがレポートとして駄物切手の扱い方の一例として大方のご参考に供する。 さて、ヒンデンブルクはその政治能力とは逆に切手の上ではなかなかの活躍で彼の肖像を描いたものは以下のとおりである。 |
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1 | 2 | 4 |
1 | 1927年 | 誕生80年記念 | 4種 |
2 | 1923〜32年 | 大統領シリーズ通常切手 エーベルトと組み合わせ | 9種 |
3 | 1930年 | 2に加刷、占領軍ラインランド撤兵記念 | 1種 |
4 | 1932年 | 大統領シリーズに代わる通常切手 メダルタイプ(網透かし) | 7種 |
5 | 1933年 | 4の改色及び額面追加 | 14種 |
6 | 1933〜36年 | 4及び5の同図案で透かし改正 網透かしから鉤十字透かし | 17種 |
7 | 1934年 | 6に黒枠を加刷した追悼記念 | 6種 |
8 | 1939年 | オステン改値加刷 ポーランド占領区で発行(6に加刷) | 13種 |
9 | 1940年 | エルザス加刷 フランス占領区で発行(6に加刷) | 16種 |
10 | 1940年 | ロートリンゲン加刷 フランス占領区で発行(6に加刷) | 16種 |
11 | 1940年 | ルクセンブルク加刷 ルクセンブルク占領区で発行(6に加刷) | 16種 |
以上を合計すると119となる。その内2と3、4〜11はそれぞれ同図案であるから図案数は僅か3である。という次第でこれでおしまいということになると全くもってつまらないのだが話は簡単に終わらない。 先ず第一にこの119種の他に、独ソ戦中にソ連領内で約300枚発行されたという加刷切手がある。ミッヘルにちゃんと載っているが真正品などまず入手不可能。 次にナチス崩壊後にソ連軍占領下の地方加刷がある。ミッヘルに明記されているものもあるが、詳しい説明もないものもあるというわけでこの辺のこととなると全くのお手上げという始末である。 そんなことよりも、先ず上記の119種を揃えること、それを未使用か、使用済みかどちらかで揃えるのが、これまた楽ではない。情けない話だが小生のコレクションはこんな具合である。 未使用で揃えたもの 8、10、11 使用済で揃えたもの 1、2、4、5、9 未使用、使用済とも揃ったもの 3、6、7 この切手を集める面白さこんな所にはない。先の表でも気がつかれたと思うが、これらの切手が使われた時期はナチスドイツのヨーロッパ制覇の時期と一致する。 従ってこれらの切手の使われ方、別の語でいえば切手帳のタブ、加刷のあり方、消印、カバー、葉書等々に歴史の流れがよみとれるのである。 よく、「その国の歴史を知ることが切手収集には不可欠だ」といわれるが、このヒンデンブルク切手も1930年から45年にかけてのドイツの歴史とからませて見ていくと面白さは限りなく広がっていく。 |